病気への対処

ふだんは丈夫な人でも環境が変わることで体調に異変が起きたり、開放感でふと気が緩み無理をしたり調子に乗ったりして、体調を崩してしまうこともあります。

病気や怪我といった不測の事態は、自分も辛いですし同行者にも心配をかけてしまいます。

アウトドアフィールドでは、携帯電話が圏外で救助が呼べなかったり、救急隊の到着までに長い時間がかかる場合が多いです。


食中毒

食あたりとか冷たい飲み物の飲みすぎなどで「少しおなかが・・・」「ちょっと下痢気味」ってことはよく聞く話ですが、食中毒は【ちょっと】って程度ではなく、のた打ち回るほどの症状がでるってこと。トイレに入って、そのまま死んでしまうのかも・・・と思わせてしまうほど苦しい症状です。

アウトドアの食事、バーベキューとかお弁当とか、どうしても家庭での食事と違い保管状態が不十分になりがちです。

食材の保存性を考慮したメニューを決めたり、火を使うメニューを多くすること。キャンプなどで期間が長くなる場合、肉類などは可能な限りその時の食材を現地で購入するようにすれば食中毒予防にもなります。さらに調理に使うまな板・包丁などはきれいに洗って十分風乾させ、場合によっては熱湯殺菌をしましょう。


感染型

サルモネラ菌・腸炎ビブリオ・カンピロバクター・病原性大腸菌O-157など。これら細菌がついた食品を食べ体内に入って増えることで中毒を起こします。

細菌名 気をつけたい食品類 主な症状/特徴
サルモネラ菌 牛肉 豚肉 鶏肉 玉子 おう吐 腹痛 下痢 発熱。 潜伏期間は12時間から数日間。
広く自然界に分布している。熱に弱いので加熱調理をする
腸炎ビブリオ 刺身などの生の魚介類 塩漬け食品 吐き気 おう吐 腹痛  下痢(おもに水様性) 発熱。潜伏期間は10時間から24時間。
塩分を好む。まな板などから二次感染を起こす。熱と真水に弱い。
カンピロバクター 鶏肉(刺身・ささみ・とりわさなど) 牛肉 豚肉 なま水 サラダ 熱っぽくだるい。頭痛 腹痛 下痢。潜伏期間は2~3日
加熱に弱いが。少量の菌でも感染する。
病原大腸菌
O-157
食肉 野菜 井戸水 腹痛 水様性の下痢(血便のこともあり)。潜伏期間は4~8日。
腸管に入った菌はわずかでも発病する。人から人へ二次感染する。

毒素型

黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌などで、こうした細菌が増殖する時に毒素が作られ、毒素のついた食品を食べることで中毒を起こします。

細菌名 気をつけたい食品類 主な症状/特徴
黄色ブドウ球菌 おにぎり 弁当 サンドイッチ サラダ 激しいおう吐 腹痛 下痢 軽い発熱。潜伏期間は約3時間。
化膿した傷などから食品が汚染される。毒素は熱に強い。
ボツリヌス菌 ハム・ソーセージ 真空パックの食品 缶詰 瓶詰類 おう吐 視力障害 舌のもつれ 呼吸困難。潜伏期間は数時間から36時間。
毒素が強く死亡率は30%以上。熱に強く酸素の少ない状態を好む。

対処法

食中毒によって下痢や嘔吐を繰り返したからだは、水分が不足し脱水症状を起こしやすい状態にあります。水分補給と適当な塩分・糖分などの補給に行いましょう。スポーツドリンクなどを上手に活用するのも一つの方法です。

下痢止め薬は場合によっては深刻な症状を引き起こすこともあり危険です。まずは医療機関を受診し、指示をあおぎましょう。


日射病/熱射病

炎天下に長時間太陽にさらされ続けるのは大変危険です。

日射病の始まりは、炎天下で熱の放散を高めるため皮膚の末梢血管が拡張し、その結果として脈が早くなり血圧が低下し、眩暈や一過性の失神などをおこします。

アウトドアで眩暈など気分が悪くなったら、まず日のあたらない涼しいところに寝て、衣服のボタンやベルトを緩めて楽にしましょう。十分に水分を補給することが大切です。通常は数10分から数時間で回復してきます。

ただし、回復せず熱疲労がひどくなった場合、発汗が止まって熱がこもり、体温の異常な上昇(40度以上)がおき脳や肝臓・腎臓などのダメージで、吐き気・ショック症状・意識障害が起こってきて危険です。放置すれば多臓器不全となり命に関わってきます。

重症度 症状 対処法
Ⅰ度 眩暈、立ちくらみ、筋肉がつる、汗が止まらない 水分と塩分の補給、涼しい場所で休む、服をゆるめる
Ⅱ度 頭痛、だるさ、吐き気、嘔吐 涼しい場所で足を高くして休む、水分と塩分の補給をしてから、病院に行く
Ⅲ度 意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温 すぐに救急車を呼ぶ。来るまでの間、水や氷で血管(首・脇の下・太股)を冷やす、意識がないときは水分は与えない

対処法

最初は「軽い症状」と思われたものが急激に悪化して重症となる場合もあるので、たかが日射病と甘く見ず、もし体調がよくならないのであればすぐに病院へ行きましょう。


ヒートロス・低体温症

水に落ちたり、川遊びで長時間水中にいたり、山で夕立に打たれたりしたら、体温は急激に奪われてゆき、震えが起こります。これがヒートロスとよばれるもの。さらにこの症状が進むと体が動かなくなり、低体温症という非常に危険な状態になっていく危険性があります。

体が寒さを感じると末梢細動脈が収縮し皮膚血流を低下させて、熱の放散を抑えるとともにふるえなどの発熱反応が起こりますが、体温が30℃以下になるとふるえすら起こらなくなり、加速度的に体温は低下していきます。

さらに体温が低下するにつれて精神・運動能力ともに低下するため、その人本来の能力を発揮できなくなり、さまざまな判断力が早い時期から低下します。

程度 症状
前兆
36.5~35度
意識は正常。手の細かい複雑な動きができない。寒気や振るえがはじまる。
軽症
35~33度
無関心状態、すぐ眠る。歩行がよろめく。口ごもる話しぶり。ふるえ最大。
中等症
33~32度
会話がのろい。閉じこもる。逆行性健忘。意思不明。運動失調。
31~30度 錯乱状態。支離滅裂。しだいに応答しなくなる。震え停止。歩行や起立は不可能。
重症
30~28度
半昏睡状態。瞳孔散大。心拍、脈拍微弱。呼吸数は半分以下。
28~25度 昏睡状態。心室細動。
25度以下 腱反射消失。仮死状態。
20度以下 脳波消失。心停止。

対処法

初期段階での防寒対策が重要で、フードやドライスーツは有効な手段です。寒さに対する耐性は個人差があり、皮下脂肪の量などで異なってきます。自分の寒さに対する耐性を知り、過度の我慢は避けましょう。


高山病(低酸素症)

高山では空気が地上と比べて薄いため、概ね2400m以上の高山に登り酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れます。これが高山病です。

気圧が低く、空気も薄くなる高山では体内に供給される酸素が不足して動悸・めまい・頭痛・吐き気などの症状が表れます。症状が重い場合、無駄な体力を使わないよう安静にし酸素吸入を行います。そして酸素の多い標高まで下山します。

高山病は脱水状態によっても生じやすくなります。高山では呼吸の回数が増えることで、口から水蒸気の形で体内の水分を失われやすくなるので、予防のためにはこまめに水分補給を行うと良いでしょう。


予防法

  • 体を徐々に慣らしながらゆっくり登る
  • 休憩を取りながら登る
  • 意識的に深い呼吸をする
  • 十分な水分補給をとる
  • 十分に保温する
  • お酒は駄目!

おかしいと思ったら…

  • 低いところへ移動し、酸素の濃度を上げ、回復したらまた登ります。
  • 酸素ボンベを使う。スポーツ店で1.000円程で購入できます。
  • 無理をせずに下山する。

一酸化炭素中毒

アウトドアで一酸化炭素中毒…と、ピンとこないかもしれませんが、テント内での一酸化炭素中毒事故はよく発生しています。

冬季などにテント内でバーナーを使用したり燃料タイプの暖房器具を使ったりが原因で、一酸化炭素は無色無臭の気体で、普通にはなかなか気がつきません。

血液中
CO-Hb濃度
症状
~10% 特になし
10~20% 軽い頭痛(特に運動時)前頭部頭重感
20~30% 拍動性の頭痛、吐き気、めまい、動悸、呼吸促進
30~40% 激しい前・後頭部頭痛、頻脈、めまい、視力障害、昏迷、失神
40~50% 上記症状の憎悪、視力・聴力障害、筋脱力
50~60% 昏睡、痙攣
60~70% 昏睡、呼吸の抑制、心機能の抑制
70%以上 心不全、呼吸不全、死亡

対処法

テントや車内で一酸化炭素中毒が発生した場合、できるだけ早くテントの入り口や車の窓を開け放ち換気をしましょう。中毒の原因となったバーナー類を消すときには、爆発の危険があるので十分に注意しましょう。

軽度の一酸化炭素中毒では、新鮮な空気を吸うことで回復することが多いでが、重症の場合はフェースマスクを使った高濃度の酸素吸入や人工呼吸は必要になってきます。

一酸化炭素中毒はその時には何ら症状がなくても、数日後になって記憶障害などが現れることがあります。程度の大小に関わらず、医師の診察を受けましょう。