熱中症対策

熱中症とは、体の中と外の“あつさ”によって引き起こる様々な体の不調、日射病や熱射病などの総称です。

専門的には「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの連続的な病態」されています。

熱中症というと「真夏の炎天下にいたら・・・」思われますが、室内においても運動など体内の筋肉から大量の熱を発生することや、水分補給が不足しての脱水などの影響により発生する場合も多いです。実際に夏場以外でも熱中症は発生します。


熱中症のメカニズム

ヒトは体温を調節するメカニズムがあります。

  1. 皮膚の表面から空気中へ熱を放出する
  2. 汗をかき、肌の表面から蒸発するときに熱を奪う気化熱を利用する

体温よりも外気温度が低ければ、皮膚から空気中へ熱が移りやすく体温の上昇を抑えることができます。また、湿度が低ければかいた汗が蒸発する気化熱によし、体温を上手にコントロールすることができます。

しかし、外気温度が体温より高くなると空気中への熱の放出が困難になり、発汗による体温調整に頼ることになってきますが、夏場は気温が高いだけでなく湿度も高くなり、汗をかいても流れ落ちるばかりでほとんどほとんど蒸発しなくなります。そのために発汗による体温調節すら事実上できなくなってしまうのです。

そのような状態になると、カラダの機能は皮膚の血管を拡張したり皮膚の血液量を増やしたりと、どうにかして熱を放出しようと頑張るのですが、コレが熱源となって熱を放出できずに溜まって悪循環に入っていきます。

熱中症は、このように体温を調整する機能がコントロールを失い、体温がグングン上昇してしまう機能障害です。ですので条件がそろえば、炎天下ばかりでなく室内で静かに過ごしていても起こります。


熱中症の種類

熱失神 重傷度
皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少しておこるもので、めまい、失神などがみられます。顔面そう白、呼吸回数の増加、唇のしびれなどもみられます。脈は速くて弱くなります。
熱疲労
大量の汗をかき、水分の補給が追いつかないと脱水がおこり、熱疲労の原因となります。脱水による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などがみられます。
熱けいれん
大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分濃度が低下した時に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんがおこります。暑熱環境下で長時間の運動をして大量の汗をかく時におこるもので、最近ではトライアスロンなどで報告されています。
熱射病
体温の上昇のため中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)が特徴で、頭痛、吐き気、めまいなどの前駆症状やショック状態などもみられます。また、全身臓器の血管がつまって、脳、心、肺、肝、腎などの全身の臓器障害を合併することが多く、死亡率も高くなります。

熱中症になってしまったら(応急処置)

熱中症かもしれない、と思ったらまずまっ先にしなければならない基本。

  1. 涼しい日陰やクーラーの効いた室内などに移動する
  2. 衣類をゆるめて休む
  3. 体を冷やす
  4. 氷や冷たい水でぬらしたタオルを手足に当てる
    水がない場合は、タオルやうちわ、衣服などを使ってあおぐ
  5. 0.1%くらいの塩水か、スポーツドリンクを少しずつ何回にも分けて補給

熱疲労

心臓より足を高くして、あおむけに寝かせる。水分が摂れるなら少しずつ薄い食塩水かスポーツドリンクを何回にも分けて補給する。


熱けいれん

けいれんしている部分をマッサージする。また、体の特定の部分(例えば脚など)が冷えているなら、その部分もマッサージしておこう。


熱射病

上半身を高くして座っているのに近い状態で寝かせ、とにかく体を冷却。首、脇の下、足のつけ根など、血管が皮膚表面に近いところを氷などで集中的に冷やす。氷がない場合は、水を体にふきかけ、風を送って冷やす。アルコールで体を拭くのも良い。このとき注意したいのは、体の表面だけを冷やしてふるえを起こさせないこと。


意識がはっきりしない場合
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  • 反応が鈍い
  • 言動がおかしい
  • 意識がはっきりしない

こういった場合はすぐに救急車を呼びましょう。救急車が到着するまで応急処置をしておきましょう。

応急処置によって回復しても、早めに病院で診てもらいましょう。


熱中症にならないために

  • 運動前に内臓(胃など)の負担にならない程度に出来るだけ多くの水分を取る。
  • 発汗によって失った水分と塩分の補給をこまめに行う。スポーツドリンクなど塩分と糖分を飲みやすく配合した飲み物も良い。
  • 睡眠を十分に取る。
  • 十分に休憩を取りながら作業する。
  • 体感温度を下げる方法として、日射を防ぐ、通風を確保する、扇風機の風を作業場所へ向ける、スポット冷房する、作業服の内部へ送風する(そのような機能を持った作業服を着用する)、蓄冷剤を利用する、水の気化熱を利用して体温を下げるなどの工夫を行う。
  • 一人でいると発見が遅れることになりかねないので、グループで行動する。

こんな人は気を付けよう

熱中症にかかりやすい環境

  • 前日に比べて気温が急に上がった時
  • 気温がそれほど高くなくても、湿度が高い時
  • アスファルトなどの人工面で覆われているところや砂地、草の生えていない裸地

熱中症にかかりやすい人

  • 風邪や下痢などで体調を崩している人
  • 寝不足
  • 乳幼児、高齢者
  • 肥満の人
  • 以前に熱中症にかかったことのある人
  • 無理をしやすい人、我慢強い人